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金融機関のマイナンバー利活用方法とは?
公的個人認証サービスのメリットも解説

マイナポイント事業をはじめとする、国や地方自治体の積極的な推進策により、急速に普及が進んでいるマイナンバーカード。今では国民の約7割が保有している。健康保険証としての利用や各種証明書の発行ができることなどが主な利用方法として挙げられているが、実は金融機関ならではの活用方法があることをご存知だろうか。

本記事では、金融機関のマイナンバー利活用方法を、具体的な事例も紹介しながら詳しく解説する。

▼マイナンバーカードの仕組み

マイナンバーカードは、氏名・住所・生年月日などの個人情報や顔写真が掲載されている「表面」と、ICチップが搭載されている「裏面」に分けられる。さらに裏面を詳しくみていくと「カード券面」「電子証明書」「ICチップの空き領域」の3箇所があり、それぞれ異なる機能や用途を持っていることをおぼえておきたい。

カード券面
「カード券面」とは、12桁のマイナンバー(個人番号)のことだ。個人番号の提示を求められたときには、この部分を使うことになる。

ただし、このマイナンバーを利用できるのは国や地方自治体などの行政機関のみ。金融機関を含む民間企業の直接利用はできない。

加えて、利用範囲は社会保障・税・災害対策の3分野の事務手続きに限定されている。そのため、証券会社が支払い調書にマイナンバーを記載して税務署に提出する場面や、企業が従業員の源泉徴収票にマイナンバーを記載し、税務署に提出する場面など、利用シーンは限られているのが現状だ。
電子証明書
電子証明書とは「間違いなく本人であることを電子的に証明するもの」のことだ。マイナンバーカードのICチップに組み込まれており、「署名用電子証明書」と「利用者証明用電子証明書」の2種類に分けられる。

署名用電子証明書とは「作成・送信した電子文書が、利用者の作成した真正なものであり、利用者が送信したものであること」を確かめられるものだ。書面取引における印鑑証明書をイメージするとわかりやすいかもしれない。利用する際には、英数字6~16文字の暗証番号が必要となる。

一方、利用者証明用電子証明書は、ウェブサイトにログインする際、本人であることを証明する手段として用いられるものだ。いわゆる免許証やパスポートなどのような役割を果たす。

電子証明書は、マイナポータルへのログインや、コンビニでの住民票写の交付、e-Taxでの確定申告など、さまざまな場面で活用されている。

ただしカード券面と異なり、行政機関だけではなく民間事業者も活用可能だ。利用する際は、内閣総理大臣及び総務大臣の認定が必要となる。
ICチップの空き領域
マイナンバーカードのICチップには、電子証明書や「空き領域」と呼ばれる部分が存在する。この部分は、カードアプリケーション(カードAP)を搭載することでさまざまなサービスに活用できるのが特徴だ。

空き領域は「地域住民向け領域」と「拡張利用領域」の2つに分けられるが、金融機関などの民間事業者は後者のみ利用できる仕組みになっている。ICチップの空き領域を利用する際も、電子証明書と同様に内閣総理大臣及び総務大臣の認定が必要だ。

なお、独自のカードAPを開発・導入することもできるが、国と地方公共団体が共同で管理するJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)から無償で提供されているカードAPの利用も可能となっている。

▼金融機関のマイナンバーカード利活用方法は?

電子証明書やICチップの空き領域を活用することで、金融機関でもマイナンバーカードを活用できるようになる。特に注目を集めているのが「公的個人認証サービス」だ。

公的個人認証サービス

公的個人認証サービスとは、インターネット上で書類の申請や届出を行う際に、マイナンバーカードに搭載された電子証明書を活用して、安全・確実に本人確認を行うサービスのこと。

「電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律」に基づいて、J-LIS(地方公共団体情報システム機構)によって運営されている。

公的個人認証サービスを利用する際は、まずユーザーがICカードリーダライター、またはマイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンを通じてマイナンバーカードを読み取った後、暗証番号を入力する。その後、金融機関のシステムを経由してJ-LISに情報を照会し、本人確認が完了する仕組みだ。

公的個人認証サービスを活用したオンライン本人確認(eKYC)は、犯罪収益移転防止法でも認められている(※)

2023年6月1日時点で447社が利用しているサービスであり、今後もますます活用される場面は増えていくだろう。

※犯罪収益移転防止法とは、犯罪による収益の移転の防止を図り、国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与することを目的として制定された法律のこと。この法律によって、金融機関やクレジットカード業者、宅地建物取引業者など「特定事業者」として位置付けられた事業者は特定の取引を行う際に、本人確認が義務付けられることとなった。

そのほかの活用方法

マイナンバーカードに搭載されているICチップの「空き領域」を活用している企業もある。

たとえば、株式会社TKCやNTTコミュニケーションズなどでは、ICチップの空き領域に社員の識別情報を格納したアプリを搭載し、施設の入退館・入退室管理や管理者の識別・認証に活用している。

この取り組みによって、自社内のセキュリティルームへの入退室や個人情報を取り扱う端末の使用権限確認がスムーズになり、セキュリティ対策の強化や業務の効率化につながっているようだ。

このほかにも会議・研修への参加記録や出退勤管理など、さまざまなシーンでの活用が期待されている。今のところ導入事例は多くないものの、今後活用する企業は増えていくかもしれない。

▼公的個人認証サービスを活用するメリットとは?

公的個人認証サービスを利用するためには、さまざまな手続きが必要だ。手間やコストに見合うだけのメリットがあるのかは気になるところだろう。

実際のところ、金融機関が公的個人認証サービスを活用すると、顧客サービスの向上・事務コストの削減・セキュリティの向上など、さまざまな恩恵が受けられる

顧客サービスの向上につながる

公的個人認証サービスを利用して各種手続きを行う場合、複数の本人確認書類の準備・郵送や、顔写真の撮影などは不要となる。手続きに対する顧客の負担を大きく軽減できるため、結果として口座開設や住宅ローン契約など、申込数の増加につながる可能性もあるだろう。

ここで、デジタル庁が公表している公的個人認証サービスを利用する金融機関の事例を2つ紹介したい。

・事例①:三菱UFJ銀行
これまで住宅ローンの契約にあたっては、顧客が銀行の店頭にて、契約書への記入・捺印・収入印紙の貼り付けを行う必要があった。しかし、公的個人認証サービスを利用することで、自宅のパソコンからペーパーレスでの手続きが可能に。来店や収入印紙の貼り付け、実印の押印などの手間が減り、契約者の負担が軽減された。
・事例②:PayPay銀行
これまで銀行口座を開設する際には、住所・氏名・性別など多くの基本情報の入力や、本人確認書類や容貌の撮影(表・裏・斜め)が必要であった。しかし、公的個人認証サービスの利用開始後はマイナンバーカードから情報を取得できるようになり、申込完了までの工数が削減。申込者の負担軽減につながった。

そのほかにもマネックス証券のように、オンラインでの証券口座開設時に公的個人認証サービスを活用している金融機関もある。

参考:
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3f10dd8b-8c2a-4585-9cdc-674ad2112731/32d0bfff/20230224_policies_mynumber_private-business_reference_01.pdf

事務コストを削減できる

公的個人認証サービスを導入すると、手続き完了までの工数が減ることに伴い、事務手続きに要する作業負担も軽減できる。マイナンバーカードの情報を読み取ることで手続きに必要な情報を取得するため、必要書類(本人確認書類)の不足や、画像不鮮明による不備などは基本的に発生しない。本人確認書類や容貌の画像などをチェックする手間も省けるため、事務コストを削減できる点は金融機関にとってのメリットといえるだろう。実際に事務効率が3倍になったという事例もある。

なお、公的個人認証サービスを利用している企業は、顧客から同意を得ればJ-LISから顧客の最新情報を取得できることもおぼえておこう。

従来は住所などの顧客情報を最新化するために、1年に1回程度郵送で顧客への確認をしている企業が多かった。しかし、この方法には必ず返信が来るとは限らない、郵送コストがかかる、などのデメリットがあった。今後はJ-LISから最新の4情報を取得することで、顧客が氏名や住所などを変更した際に、顧客からの連絡を待つことなく、企業が能動的に顧客情報を更新できるため、スピーディーな対応が可能となることが期待される。

セキュリティを強化できる

電子証明書を用いた「なりすまし」や「データの改ざん」を防ぐ仕組みが構築されているため、セキュリティを強化できるのも公的個人認証サービスを用いるメリットのひとつだ。

従来のID・パスワードを使った本人確認のプロセスでは、第三者にID・パスワードが詐取されたり、漏洩したりすることで、不正な手続きが行われるリスクがあった。

一方、公的個人認証サービスでは「公開鍵暗号方式」と呼ばれる仕組みが用いられており、手続きを進めるためにはマイナンバーカードのICチップに記録されている「秘密鍵」が必要となる。つまり、マイナンバーカードの保有者しか手続きを進められないシステムになっているのだ。もちろん、カード自体の紛失・盗難といったリスクはあるものの、24時間365日対応のコールセンターに連絡すればいつでも電子証明書の利用をストップできる。

高いセキュリティを確保できるため、ユーザーも安心してマイナンバーカードを利用できるだろう。

▼まとめ

本記事では金融機関のマイナンバー利活用方法として、公的個人認証サービスの仕組みやメリットを中心に解説した。

公的個人認証サービスを導入することで、利用者・契約者のユーザービリティを高められるだろう。オンライン上で手続きが完結するため、金融機関側での事務手続きにかかるコスト削減にも期待できる。セキュリティ面でも安全性が高いため、個人情報漏洩や不正送金などのリスクにも対処可能だ。

2023年5月11日からはAndroidスマートフォンの一部機種で、マイナンバーカードと同等の電子証明書機能が利用できるようになった。これにより、利用者はマイナンバーカードを持ち歩かなくても各種サービスが利用できるようになる。

マイナンバーがより身近になっていくにつれ、金融機関での利活用もさらに広がっていくだろう。

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